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取締役の解任手続きと正当理由の有無~会社が負う責任とは?(7回目)

【質問】

問題のある取締役を解任したいのですが、株主総会で決議すれば足りるのでしょうか。

手続きに不備があると無効になるのではないか、また、正当な理由がないとして損害賠償を請求されないか不安です。

【回答】

前回は「解任される側」視点で事前防止策や解任された場合の争い方について解説しました。

今回はその続きです。

【解説】

取締役はいつでも理由なく解任される立場にあります。

しかし、解任された取締役は損害賠償請求ができる場合があります。

(4)損害賠償を請求する方法

取締役として解任されたこと自体は争わず、しかし解任されたことによって被った損害を請求するという対処法があります。

【会社法第339条】

1 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

解任理由の正当性は解任決議の効力に影響を及ぼしません。しかし、正当性がない場合、会社は損害賠償義務を負うことになります。

では、「正当な理由」とは何かが問題となります。

この点については一律の基準があるわけではなく、ケースバイケースというのが正確な回答と言わざるを得ません。

もっとも、裁判例の積み重ねにより、ある程度の傾向はつかむことができます。

<正当性が認められやすい類型>

  • 職務執行に関係する法令、定款違反行為があった場合(但し、軽微な違反に留まる場合は別途考慮が必要)
  • 心身の故障により業務執行が困難な場合
  • 合理的な理由なく長期にわたって取締役会を欠席した場合
  • 会社への敵対行為、業務妨害がある場合
  • 名目的取締役である場合

なお、職務執行と関係しない法令違反行為があった場合、オーナーと対立・見解の相違がある場合、経営判断の失敗に留まる場合(善管注意義務違反と断定できない場合)などの事例では、正当性が認められず、会社が損害賠償義務を負担する可能性は高いと考えられます。

次に、正当性が認められず、会社が損害賠償義務を負担する場合、具体的にどの程度の金銭負担が生じるのかが問題となります。

これについては、原則として、解任が無ければ取締役が残存任期中に得られたであろう役員報酬相当額とされています。

現場実務で問題となるのは、取締役の任期が定款で10年に伸長されている場合の残存任期中に相当する役員報酬相当額の支払い義務が生じるのか、特例有限会社において任期が定められていない場合はどうなるのか、という問題です。

この点、前者については、一定期間(2年程度)に限って損害賠償額を算定した裁判例が存在する一方で、10年の任期を前提にした残存任期に基づく損害賠償額を算定した裁判例も存在しており、判断は統一されていません。ただ、理屈の上では、どうしても10年の任期を前提にした残存任期に基づく損害賠償額算定とならざるを得ないと考えられます。

一方、後者については、任期の定めがないということは、いつ解任されてもおかしくないということになりますので、基本的には損害賠償義務を負わないと考えられています(つまり、残存任期に基づく役員報酬を得られる合理的期待は法律上保護されないということです)。

ところで、役員報酬以外に役員賞与が含まれないのかという点も問題となりえます。

この点については、役員賞与を必ず支給するルール(算定方法、支給時期など)があったと言えるのであれば、会社は役員賞与相当額についても損害賠償義務を負担すると考えられています。逆に、役員賞与は、業績等に応じて株主総会で都度決議をしていたというのであれば、確実に支給されるものとは言い難いため、損害には含まれないことになります。