【質問】
問題のある取締役を解任したいのですが、株主総会で決議すれば足りるのでしょうか。
手続きに不備があると無効になるのではないか、また、正当な理由がないとして損害賠償を請求されないか不安です。
【回答】
前回までは解任する側の視点で解説しました。今回は「解任される側」視点で解説します。
【解説】
取締役はいつでも理由なく解任される立場にあります。
しかし、対抗する手段はいくつかあります。
以下では、解任の対象となった取締役が採りうる対抗策につき解説します。
(1)事前防止策を講じる方法
例えば、名義株の問題や新株発行手続きに不備があるため株式の帰属や議決権の数に問題がある場合、株主総会開催禁止の仮処分や議決権行使禁止の仮処分の申立てが検討できます。
また、従前から適法な株主総会が開催されていない場合、解任手続きを進めようとしている取締役は適法に選任されたことにはなっていない以上、手続き自体を進める権限がないことを理由に職務執行停止仮処分の申立てを行うことも考えられます。
これらのポイントは、解任それ自体を問題視するのではなく、そもそも会社はこれまでに会社法上の手続きを適切に履行してきたのかという全体を問題視し、何か綻びがあるのであれば、そこを徹底的に突いていくという点にあります。
中小企業の場合、会社法上の手続きを適法に実践していない方がむしろ通常ですので、手続き上の問題点は必ず見つかると言っても過言ではありません。しかし、株主総会を開催されるまでの僅かな時間で証拠を収集し、裁判所に仮処分の申立てを行うことは現実問題としては難しいところがあります。
したがって、検討の余地はあるものの、権利行使に至らないというのが実情のようです。
(2)事後的に解任決議の効力を争う方法
繰り返し解説していますが、取締役を解任するに際しては、その解任理由を問いません。
このため、事後的に解任決議の効力を争う方法とは、専ら解任決議に至るまでの「手続き上の不備」を理由とした対処法となります。
例えば…
- 株主総会決議不存在確認訴訟(例えば、従前より適法な株主総会が開催されていなかった場合など。会社法第830条第1項)
- 株主総会決議取消請求訴訟(例えば、招集手続きに法令違反があった場合など。会社法第831条)
などが考えられます。
なお、上記訴訟には一定の時間を要することから、その期間中の取締役としての地位を回復するべく、「取締役の地位を仮に定める仮処分」の申立ても並行して進めることも検討する必要があります。
(3)使用人兼務取締役を主張する方法
取締役と使用人(労働者)は法的地位を異にするものの、両者の地位は同時に併存しえます。例えば、取締役として業務執行しつつも、一方で経理部長や開発責任者等の肩書で現場業務にも従事している場合、両者の地位が併存しているので使用人兼務取締役として取り扱われることになります。
さて、使用人兼務取締役の場合、対象者が取締役として解任されたとしても、使用人(労働者)の地位まで当然に剥奪されたことにはなりません。
労働者の地位まで剥奪するのであれば、解雇手続きを踏む必要があります。そして、解雇手続きを実施する場合、「客観的に合理的な理由があり、かつ当該理由が社会通念上相当」な理由がない限り、解雇することができません(労働契約法第16条)。
以上の地位の相違を捉えて、解任対象となった取締役は、正当性がないとして損害賠償を請求しつつ、使用人としての地位は存続しているとして勤務を希望するという対抗手段を講じることが可能となります。







